bookmark_border「日本政府に核兵器禁止条約に署名・批准を求める意見書を提出することを求める請願」についての賛成討論

2023年の9月議会には、新婦人の藤岡支部より「日本政府に核兵器禁止条約に署名・批准を求める意見書を提出することを求める請願」が提出されました。9月4日に委員会での審議があり、中澤は紹介議員として質疑に応じました。20日の本会議で以下のような賛成討論を行いました。

討論全文

請願第3号 日本政府に核兵器禁止条約に署名・批准を求める意見書を提出することを求める請願についての賛成討論

 請願に対して賛成の立場で討論をいたします。
 先日の委員会では請願を採択するべきでない理由として、核兵器禁止条約に日本政府が批准することは核抑止の正当性を否定し国民を危険に晒すことになることが挙げられていました。厳しい安全保障環境があるなかではありますが、だからこそ核兵器による抑止力に依存することは世界をより危険に不安定にするものと考えます。
 そもそも「抑止力」とは古くは「敵対国からの軍事攻撃を未然に防ぐために、軍事攻撃が実行されれば軍事力で報復するという威嚇である」と定義されています。恐怖を与えて攻撃を思いとどまらせるという考え方ですが、これは敵対国を上回る軍事力が必要となる考え方です。お互いの国が、世界中が抑止力の考え方で軍事力を増強しあえば際限のない軍拡競争に行きついてしまうというのが抑止力の本質ではないでしょうか。
 核抑止というのはこの抑止力を核兵器を後ろ盾にする考え方であり、際限のない核兵器の増強を正当化する考え方です。アメリカの核抑止に依存することは短期的に周辺各国の軍事行動を押さえつけることに有効であっても長期的にはお互いの軍事力・核兵器の増強につながる、より世界を不安定にしてしまうことは明らかです。事実、世界は実質的な核軍拡が進んでいます。長崎大学核兵器廃絶研究センターによれば、世界の核兵器は今年の6月現在で12520発とされています。これは過去10年間で4780発減少していますが、いつでも使える「現役核弾頭」とよばれる核兵器の数は2018年以降9251発から9587発と明らかに増えています。また核兵器の近代化や新型核兵器の開発など、質的な軍拡も続いています。
 抑止力の考え方がこうした不安定な状況を継続させているのではないでしょうか。

 核兵器禁止条約は成立から4年を経過し現在多くの国が参加していますが、核保有国は1カ国も参加していないため、その効力を疑問視する声もきかれました。しかし、1997年に9月に成立した対人地雷全面禁止条約であるオタワ条約は、アメリカ、中国、ロシアの反対がありながら成立し、着実に参加国を増やし、地雷の製造・使用・被害を減らしています。現在もアメリカ、ロシア、中国のほかインドやパキスタンなどの軍事大国が参加しないなかですが世界中の164カ国が加盟し、加盟国以外にも対人地雷は「悪魔の兵器」であり人道に反するものとの共通認識が広まっています。オタワ条約は影響力の大きな国の参加がなくても世論を動かすことで現実を変えていくことができることを証明しています。
 アメリカが反対しているなか日本政府が参加することは日米関係に悪影響となるのではとの心配もありますが、オタワ条約に日本が調印する1998年当時も同じような懸念があったようです。アメリカはオタワ条約に反対であり、当時の朝鮮半島の安全保障にとって欠かせないとしていましたが、協議の末、条約への調印は「日本が決める問題である」として日本の選択を最大限尊重し受け入れ、条約への調印は日米同盟への悪影響とはなっていません。

 核兵器禁止条約は核抑止力論のジレンマから世界の議論を大きく進めるための条約です。この条約の成立には日本の被爆者が大きな力を発揮しました。その日本が正式に条約に参加することは核兵器廃絶に向けた国際的な議論を大きく進め、核兵器保有国の政策転換を後押しすることになるのではないでしょうか。
 核兵器保有国が参加していないからこそ、「唯一の戦争被爆国として核のない世界へ核保有国をリードするため」に日本政府の勇気ある行動が求められています。請願のとおり、政府は条約に参加するべきであると考えますので意見書を政府に提出し批准を求めることに賛成をしまして討論といたします。