請願に対する賛成討論
群馬県医療労働組合連合会より提出された表題の請願書への賛成討論を以下のように行いました。
「議長より登壇の許可をいただきましたので、請願第4号にたいする賛成の立場での討論をいたします。
請願では請願項目1として「医療や介護現場で働く全てのケア労働者の賃上げと人員配置増につながるよう、診療報酬と介護報酬を抜本的に引き上げる臨時改定を実施すること。」を求めています。この間、ケア労働者に対して処遇改善につながる賃上げ補助の政策がとられてきましたが、対象医療機関、対象者が限定されていて、すべてのケア労働者の賃上げにつながっていない実態があります。とくに請願趣旨にある「看護職員処遇改善評価料」の対象医療機関は大きな病院に限られ、市内では2-3の病院しか対象となっていないと見られています。また、公立藤岡総合病院では約300人の看護師全員にこの「看護職員処遇改善評価料」相当の12000円を特殊勤務手当として支給していますが、訪問看護事業は対象外であるため訪問看護に従事する看護師の手当分は病院の持ち出しとなってしまっているとのことで、すべての医療機関、すべてのケア労働者の賃上げを保障する制度となっていないことが示されています。
委員会審議では診療所は黒字でもうかっているから賃上げ補助を行う必要はなく対象外となったのは当然との指摘がありました。財務省の「機動的調査」によると、全国18000法人の医療法人が運営する診療所の1施設あたりの利益率は2020年度の3%から2020年度には8.8%へとたしかに急増している結果となっています。しかし急増したように見えるのは起点とした2020年度の経営がコロナ禍に伴う受診控えで大きく落ち込んだためです。
財務省はコロナ禍をへて医療法人の診療所の利益剰余金が役2割増えたとして「賃上げに使え」とも迫っています。しかしこの2割はあくまで平均値であり、保険外診療で高収入を得る美容関係などのクリニックが一部にある一方、厚生労働省の経営調査では4軒に1軒が赤字となっていて、多くの診療所は厳しい経営であり自力での賃上げは困難な状況といえるのではないでしょうか。
国はケア労働者に対して月6000円の処遇改善策を新たに決定したとされていますが、たとえば介護職の平均賃金は全産業平均よりも月に6万円以上低く、6000円では一桁足りず、全く不十分と言わざるをえません。
地域の医療や介護をまもり、医療従事者やケア労働者の人手不足に対応するためには、処遇改善の対象を限るのではなく、すべての医療ケア労働者の賃上げにつながる診療報酬・介護報酬の引き上げが必要であり、請願は当然の要求と考えます。
請願項目の2「すべての医療機関や介護施設に行き渡る物価高騰支援策を拡充すること」については、県による入院施設に対して病床あたり6300円の食材費の補助を行う物価高騰対策支援は、公立病院が除外されていることからすべての医療機関には行き渡らない制度であること、また、物価高騰対策に取り組む介護福祉施設支援給付金は物価が上がっている中給付金額は昨年と比べて減額されていて不十分であることから、この要望も当然であると考えます。
診療報酬や介護報酬の引き上げで国民の医療費や保険料の負担も重くなる、との指摘もありますが、これは医療機関やケア労働者と国民とを対立・分断させる議論に同調するものです。対立しあってもお互いに利益はありません。対立の構図をうまない仕組みで国民の医療や介護を保障するよう行政・国に責任を果たさせることも重要であることを最後に申し述べ、請願に対する賛成討論とさせていただきます。議員皆さんのご賛同をよろしくお願いいたします。」
賛成少数で「不採択」という結果でしたが
採決の結果、中澤を含めて3名の賛成がありましたが、「賛成少数」で請願は不採択となりました。
不採択とはなりましたが、請願の紹介を通して現場の声を議会に届けることができ、少数でも賛同を得られたことには意味があったと思います。請願の紹介を通して、市民のみなさんの声を届け、広げる重要な役割を担っていることをあらためて実感しました。