6月23日の藤岡市議会第3回定例会(6月議会)最終日の本会議で、「子どものために保育士配置基準の引き上げによる保育士増員を求める意見書の提出を求める請願書」という請願の採決が行われました。採決に先立って、請願書のとおり国に意見書を提出することに賛成の立場で以下のような討論を行いました。
2023年6月23日藤岡市議会本会議での討論
保育施設における保育士や職員の人数が不足している実態については、この間のたびたびの園長会による要望や、また3月議会の一般質問にたいして「各施設において配置基準以上の職員を配置しているのが現状でありまして、市としましても、現場が抱える課題として認識して」いるとの答弁があったことから、本市の課題であり、改善が望まれていることは請願理由にあるとおり「現在の配置基準は不十分であり、子どもの命と安全を守るために保育士増員が急務となっている」ことは異論のないものと考えます。
愛知保育団体連絡協議会が行った「子どもたちに、もう1人保育士を!」というアンケートの調査結果では、「保育士1人が受け持つ子どもの人数で適切だと思うもの」という設問に対してどの年齢でも現行の基準が適切という回答がもっとも少なくなっています。その現行の基準である保育施設の保育士の配置人数は1948年制定の「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」に定められていますが、0歳児の基準は25年前、3歳児は54年前、1、2歳児は56年前、4、5歳児にいたっては75年前の基準で1948年の基準制定当時から変わっていません。基準制定の際にはアメリカワシントン州の基準を参考にしたとされていますが、人材確保の面や経済的な問題により大幅に低い基準として制定された経緯があります。そのため「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」の第1条第3項は「内閣総理大臣は、設備運営基準を常に向上させるように努めるものとする。」とし、時代や状況に応じてその基準を改善することを国に求めています。
委員会の審議では、人員増は基準の引き上げではなく、加算で対応することが現実的であるとして、国に対して意見書を送付することは求めない趣旨採択という意見が多数となりました。しかし、加算では全ての保育施設の人員増を保障することにはならず、施設間で保育の質に格差が生まれることになります。基準の引き上げは、全施設で基準に見合う保育士を確保する必要が出て、現場に混乱が生じる可能性があるとの見解もありますが、1948年の基準制定当時も、基準の制定によって基準に適応しない施設が多数うまれることを懸念する同様の議論はあったようです。しかし「最低基準」とは「かくあるべき(ゾルレン)」という理想も含むものであり、その基準に達しない施設に対しては経過措置で対応するということにして基準は制定されました。請願の求める基準の引き上げの際にも経過措置の規定をおくことで、混乱を避けながら全ての施設の質を底上げすることができるのではないでしょうか。
配置基準の見直しは10年前に政府与党などにより約束されたものの、数千億円の予算が確保できないとして2015年の子ども子育て支援新制度の開始時に実行されず、その後も先送りされつづけています。その間防衛費は2兆円ほど増え、大企業の内部留保は150兆円以上増えています。意見書を提出し、国に予算の配分や課税のあり方を見直すことで財源を確保させ、配置基準見直しを確実に実行させることを求めるべきです。
1948年制定の配置基準策定に関わった当時の厚生省児童局の企画課長は「児童福祉施設最低基準」という発行物に、「最低基準というものは、日進月歩しなければならない。」とし、当時策定した基準も「1948年の日本経済の一面を物語るものとして、歴史の中に忘れ去られそして、いわゆる先進文明国のそれと同じレベルのものが書き上げられなければならない。」と記しています。
いまだに制定当時の基準が残り、国際的に見ても低い基準によって、現場に大きな負担が強いられ子どもたちの安全が脅かされています。市民の安全をまもる立場である藤岡市として、国がこの基準を速やかに引き上げるよう意見書を提出することは当然であり、議会として提出を求めることが必要です。
議員の皆様には、趣旨採択にとどめず、意見書の提出を求めることにご賛同いただくようお願いしまして請願に対する賛成討論といたします。