「腐食により緩衝装置が脱落」として14件の不具合報告
4月23日、衆議院の国土交通委員会で日本共産党の堀川あきこ議員が、自動車のリコール制度と日産リーフの不具合について質問をしました。
質問内容は、この間ブログに掲載した「日産リーフの構造的な欠陥の疑いについて①」「日産リーフの構造的な欠陥の疑いについて②」で問題となっている件についてです。日産リーフは、緩衝装置であるフロントストラットという部分の取り付け部であるアッパーマウントが構造的に錆が発生しやすく、腐食により車体から脱落する不具合が頻発しています。
藤岡市のAさんは、走行中にドーンという音ともにアッパーマウントが脱落し、そのとき持ち込んだ自動車修理工場で自立走行は危険と判断されたため日産の販売店へレッカー移動して以来、その車には乗ることができていません。日産には販売店を通して不具合発生の原因の究明を求めていますが明確な回答がなく、修理もできない状態がつづいています。
国交省の運営する「不具合情報ホットライン」には、日産リーフの同様の不具合が2025年4月時点で14件報告されています。(5月の更新でさらに1件の報告が追加されています。)
「アッパーマウントが腐食して分離しても、不安全な挙動がない」とリコールを否定
国交省はAさんのような危険な事例が全国で起きていることを把握していながら、不具合情報にもとづいて行うとされる「構造装置または性能が保安基準に適合しているか否かの確認」については「他の事案と同様」に道路運送車両法にもとづいて日産自動車に対して必要な調査報告を求めるとともに技術的な検証を行うなどの、一般的な対応にとどまっているようです。
その結果、「アッパーマウントが腐食して分離をしてもガタつきは生じるものの走行することは可能であり、急加速、急旋回等を行なっても不安全な挙動がない」ことからリコールを行う緊急性はないとしてリコールの届出には至っていません。
レガシィは「走行安全性に影響はないものの」リコールの届出
実は今回問題としている前輪部分の緩衝装置である「フロントスロラット」に関わるリコールが過去に別の車種で出されています。2017年1月にリコールを出したスバルレガシィです。リコールの理由は「ストラット上端取り付け部の締結緩み評価が不十分なため縁石乗り上げなど、衝撃で締結取り付けナットが緩むことがある、このためそのまま使用を続けると当該取り付け部にガタが生じて損傷し、異音を発生する恐れがある。」というものです。このリコールについて国交省は「走行安全性に影響はないものの、300件以上不具合が発生したということから、ユーザーの不安を解消するために自動車メーカーが自主的にリコールを届け出たもの」との認識を示しました。
不具合300件「発生」のレガシィ、14件「報告」のリーフ
リーフは「不安全な挙動がない」としてリコールは否定される一方、レガシィでは「走行安全性に影響はない」という判断にも関わらずリコールという結果になっています。
同様の部分での不具合なのに異なる結果となっているのはなぜか。ふたつの事案の特に異なる点は不具合情報(発生)の件数です。リーフの場合は14件に対し、レガシィでは300件以上です。そのためレガシィではユーザーの不安を解消するためにリコールとなったとのことでした。
しかしリーフの場合、国交省の不具合情報ホットラインに寄せられた「報告」だけで14件です。報告はユーザーの任意であり、報告されるのはほんの一握りです。全国には報告されない不具合件数があるはずです。国交省はレガシィの不具合「発生」件数300件と比較可能な調査方法でリーフでの不具合発生件数を把握したうえで、あらためて見解を述べるべきと思います。
リーフの不具合情報には「スリップしたような挙動」「破損」「脱落」「交換を提案」など深刻な報告
リーフに関しての不具合情報には、
・サスペンションのアッパーマウントに水が溜まり、ボルトが酷く腐食したため、車検見積もり時に、直さないとダメと指摘を受けた。(2025年3月)
・走行中にガタガタと異音がし、スリップしたような挙動になった。整備工場へ入庫して確認した結果、右前輪のショックアブソーバーが外れていた。」(2024年12月25日)
・「一般道を走行中に車がガタガタと振動した。整備工場で確認したところ、運転席のショックアブソーバーが抜けていた。」(2024年11月15日)
・「右フロントサスペンションのアッパーマウントに雨水が溜まって錆びていると指摘され、交換を提案された。」(2021年12月12日)
・「構造上の問題でアッパーマウント部分に雨水が溜まったために錆が発生し、マウント部分が走行中に破損してストラットが脱落した。」(2021年10月12日)
などのように部品が脱落したり、交換が必要となる深刻な報告が寄せられています。
レガシィがリコールにいたった理由は「ナットの緩みでガタが生じて損傷し、異音が発生するおそれがある」ことでしたが、上記のようにいくつも深刻な内容が報告されているリーフでリコールが行われていないのは不自然です。
今回の質問ではレガシィに発生した300件の不具合が「異音が発生する」程度のことだったのか、それとも重大な不具合であったのかは明らかにされていませんが、リーフに発生しているこれらの不具合は1件でも重大と思わせるものではないかと思います。なかには「スリップしたような挙動」という、「不安全となる挙動はない」とする国交省の見解とは異なる実態も報告されています。
アッパーマウントに雨水が溜まり錆が発生することはリーフユーザーの常識とされているようですが、こうした不具合が報告されている中、ユーザーの間で安全性に対する不安が広がっていることは明らかです。レガシィが「ユーザーの不安を解消するため」にリコールとなったのであればリーフについても同様にリコールとするべきではないかと思います。
「道路運送車両の安全な運行の確保」のためにリーフの不具合の究明を
そもそもリコール制度は「ユーザーの不安を解消するため」が目的ではありません。
国交省によるとリコール制度は「その構造・装置又は性能が安全確保及び環境保全上の基準である「道路運送車両の保安基準」(国土交通省令で規定。以下「保安基準」という。)の規定に適合しなくなるおそれがあると認める場合であって、その原因が設計又は製作過程にあると認められるときに、販売後の自動車について、保安基準に適合させるために必要な改善措置を行うこと」とされています。
走行中に緩衝装置が脱落する不具合は明らかに保安基準不適合です。そうした不具合の原因が構造的な錆の発生によるものであるとしたら「保安基準に適合させるために必要な改善措置を行う」ためにリコールを行う必要があるはずです。
そうした必要性を見極めるためには、まずは不具合情報に「報告」されている「アッパーマウントに錆が発生、腐食したことによりフロントストラットが外れたという不具合」の原因の究明が日産には求めらています。
国交省の現在の日産に対する一般的な対応では、自動車の安全な運行を確保するリコール制度が適切に機能せず、重大な事態に至る可能性もあります。堀川議員の指摘のように、国交省には日産に対する調査報告の指示と適切な指導をすることが求められています。