日産リーフの構造的な欠陥の疑いについて

 少し前ですが、2024年9月29日付けのしんぶん赤旗「日産リーフ 欠陥か」として、ユーザーの「Aさん」による告発を元にした記事が掲載されました。Aさんは藤岡市在住の方で、この問題について実際にあって話す機会もありました。今回はこの件について、この間のAさんとのやりとりも踏まえて書いてみたいと思います。

『「水たまる構造」でサビ ボルト脱落』

 まず以下に記事を引用します。

「5月(※2024年)、Aさん(※ユーザーの方の仮名)が運転中に前方から「ドーン」と音がしました。タイヤ量販店で見てもらうと「取れてはいけない部品が取れている。ハンドルが利かなくなるかも」と運転を止められました。」

「Aさんのリーフ(2014年ごろに展示者を購入)のボンネットを開けると、故障した箇所はサビつき、部品がずれていました。「アッパーマウント」という受け皿状の部品の運転席側です。タイヤの振動を吸収する緩衝装置をボルトで車体に固定する部品です。サビでそこのボルトが外れ、緩衝装置が固定されていない状態です。」(※は中澤)

「Aさんが、サビができる原因を実演してくれました。フロントガラスに水をかけると、ワイパー脇の穴に流れ込む水が運転席側のアッパーマウントに注ぎこまれていきました。一方の助手席側には水が入りません。」

 記事によると、日産は「水が溜まる構造」と認めたものの、「常に水が存在するわけではなく、発錆(はっせい)しさらに破断まで至ることはまれ」とし「(破断が)原因で不安全となる車両挙動は無く、走行不能、操縦不能には至りません」と回答しているようです。

国交省にも複数の不具合情報

 国交省に寄せられる自動車の不具合情報には、Aさんの事例を含めてフロントサスペンションの取り付け部上部が脱落するなどの情報が複数確認できます。今月の更新では昨年10月に起きた不具合情報も新たに追加され、「リーフ」「緩衝装置」で不具合情報を検索すると22件がヒットします。

フロントサスペンションの損傷・脱落は9件

 そのうち9件がフロントサスペンションの損傷や脱落につながる不具合で、Aさんの指摘する「水たまる構造」によるサビが原因ではないかと見られるものです。以下に国交省のサイトによせられた不具合情報から申告内容を抜粋してみます。

・一般道を時速30~40kmで走行中にドーンとものすごい音がした。確認したところ運転席側のストラットマウントだけに雨水や洗車水が溜まる構造の影響でマウントが酷く腐食し、ボルトの周りごと完全に脱落していた。(Aさんによる投稿、2024年8月、群馬県)

・サスペンションのショックアブソーバーのアッパーマウントを点検してみたところ、錆がかなり進行しボルトがボロボロでサスペンションが外れる手前だった。(2022年10月、沖縄県)

・右フロントサスペンションのアッパーマウントに雨水が溜まって錆びていると指摘され、交換を提案された。(2021年12月、鹿児島県)

・サスペンションアッパーマウントが錆びにより脱落した。(2021年10月、静岡県)

・構造上の問題でアッパーマウント部分に雨水が溜まったために錆が発生し、マウント部分が走行中に破損してストラットが脱落した。(2021年10月、大分県)

・雨水が溜まる部分にショックアブソーバーを止めているナットがあり、時間の経過とともにボルトが錆びつきショックアブソーバが抜けた。(2021年10月、秋田県)

・走行中、路面段差を乗り越えた途端「ガキン」という異音発生後常時カタカタ音と共にステアリング操作にも違和感が発生した。整備工場で確認したところ、右フロントサスペンションのアッパーマウントが亀裂により脱落していた。(2021年8月、長崎県)

・右フロントサスペンションの取付部上部が錆による腐食で抜け落ちた。(2018年8月、島根県)

・一般道を走行中に車がガタガタと振動した。整備工場で確認したところ、運転席のショックアブソーバーが抜けていた。(2024年11月、福岡県)

 全国でAさんと似た事例が起きていることがわかりますが、不具合が起きたユーザーのすべてが不具合情報を投稿していることは考えづらいため、実際にこうした事例はもっと起きていると考えるのが適当だと思います。

 しかしこれだけの不具合情報が寄せられていながら、日産はリコールの対象とせず、現在も構造的な欠陥を抱えたまま数十万台のリーフが日本中(世界中)を走り続けています。

メーカー、国は放置せず対応を

 日産は「(破断が)原因で不安全となる車両挙動は無く、走行不能、操縦不能には至りません」といいますが、水がたまる構造によって錆が発生し、フロントサスペンションの損傷や脱落につながるとすれば重大な欠陥です。不具合情報にこれだけの情報が寄せられていることから一部の車両に限っての不具合ではないことは明らかだと思います。

 自動車のリコールは、設計・製作に起因する不具合による事故、故障や公害の未然防止を図ることを目的として設けられている制度で、メーカーの自主的な実施が基本とされています。まずはメーカーである日産がユーザーの安全を第一に考え、対応することが求められます。

 また、自動車メーカーなどによる自主的なリコールが行われていない場合でも、事故が著しく起きているなど、同じ型式の一定の範囲の自動車について、保安基準に適合していないおそれがあり、その原因が設計や製作の過程にあると国土交通大臣が認めるときは、必要に応じて国が原因調査を行い、メーカーに対し、必要な改善措置を講ずることを勧告することとなっています。

 メーカーにも国にも、何らかの対応をとることが求められています。フロントサスペンションがとれるということはタイヤと車体の固定が外れることであり、今はまだ重大事故が起きていなくても、今後命に関わる深刻な事態にもなりかねない問題です。放置することは許されません。