去る8月5日、群馬の地方自治研究所主催で「多文化共生を考える」という学習会が開催されました。会場は高崎の健康福祉会館。会場の部屋はほぼ満員の状態で主催者も驚いていました。私にとってはこれまであまり聞くことのなかったテーマですが、二名の講師によるとても興味深い内容でした。
変化してきている国内の在留外国人
1980年以前の日本では、国内に在留する外国人は、特別永住者のいわゆる「在日」の方がそのほとんどを占めていました。しかし90年代に入るとそうした方の数は減少し、2015年現在での特別永住者の割合は、全体の約1/5程度となっています。逆に多くなってきているのは日系ブラジル人の2・3世で、80年代半ばから急増しています。群馬の大泉町は外国人労働者が多く住んでいることで有名ですが、1986年当時0人だったブラジル人が2015年には4000人以上に増えました。またブラジルの人だけでなく外国人全体も1986年の222人から2015年には7073人と30倍を超えています。こうした変化によって、様々な問題がうまれてきました。住民間では感情的な衝突もあり、トラブルも起きています。文化の違いをお互いに受け入れあい、多文化共生を実現するためには今後の行政が役割を発揮することが求められています。
定住する外国人は今の日本にとって大きな意義をもっています。前述の大泉町はもちろんですが、同じ群馬県の昭和村でも外国人を農業実習生として受け入れ、地域の貴重な労働力として活用をしています。国の指針としても「社会に活力をもたらす外国人の積極的な受け入れ」を挙げています。
日本人が気づかない住みづらさ
いま外国人が以前に比べて急増しているなかで、こうした外国人に対する制度の充実が求められています。特に言葉の壁の問題は今後早急に体制を整えるべきという指摘がされています。
例えば病院などで受診する際、言葉の壁は非常に高くなります。通訳をつけられることはほとんどなく、家族や知人が代行することでなんとか受診をするというのが実態のようです。病気などの症状を伝える際には専門的な用語や独特の表現が理解できなけらば伝わりません。通訳を伴って受診をしても、実際には病状とは全く異なる対処がされていた、という例もあるようです。いまのところ自治体も病院もこうした問題があるにも関わらずしっかりと認識できていません。
「群馬の医療と言語・文化を考える会」は独自にボランティアで通訳を募集し、医療機関を受診する外国人の支援する体制をとっています。外国人の方が病院など受診す際に通訳を派遣するという事業で、県内の各地域で各言語に対応する体制をとっています。現在、群馬県内では地域によって差はありますが最大8か国語に対応しています。今年の4月から本格的に運営していますがこの8月はじめまでの4ヶ月で50件をこえる依頼があったそうです。単純に年間ベースにしますと約200件。これまで県が把握していた通訳が必要な受診のケースは年間70件程度といいますから、正確な実態の把握はできていなかったといえます。また「群馬~の会」の対応できる地域・言語や制度の周知もまだまだ十分でないため、実際に必要とする利用者はもっと多くいると思われます。
誰もが暮らしやすい国のために
まず大きな問題は実態が把握されていないことです。体制を充実させていくには、関係する機関で実態や対策を確認し、話し合う場をもつことが必要です。群馬県ではそのスタートにも立てていないのが現状です。
「群馬の~会」の報告によると、4月からの4ヶ月の間には藤岡でも通訳派遣制度を「使いたかった」との声もあったそうです。いまのところはっきりとした需要や必要性は感じられなくても、困っている人はいるようです。小さな声を聞き取る、見えづらい需要をみつける。こうした姿勢は外国人の住みやすさだけでなく、すべての国民の暮らしやすさにもつながっていくのではないでしょうか。今回の学習会は、社会の在り方を再確認することもでき、とても有意義なものとなりました。